一部未分割の小規模宅地がある場合、相続税を軽減する特例の適用を受けられないのですか?
1 小規模宅地等の特例について
小規模宅地等の特例は、特例対象地の一定の面積について、相続税の課税価格に算入すべき価額について、一定の割合を減額することができる制度です。
不動産という、一般的に高額である資産について、5割から最大8割の減額が認められる制度ですので、特例の適用が受けられるかどうかで、相続税額が大きく変わってきます。
小規模宅地等の特例の適用について、土地の用途や適用面積の上限が主要な要件となってきますが、申告期限までに分割が終わっていない財産がある場合には、他にも気をつけなければならないポイントがあり、以下ではこの点についてご説明いたします。
なお、小規模宅地等の特例の概要等は、以下の国税庁のホームページをご参照ください。
2 特例対象地が未分割である場合
小規模宅地等の特例の適用を受けるためには、申告期限までに分割されていること、つまり、遺産分割等によって特例対象地の取得者が決まっている必要があります。
そのため、申告期限の時点で、特例対象地が未分割である場合には、小規模宅地等の特例の適用ができないため、特例の適用をせずに、相続税申告を行い、申告書に申告期限後3年以内の分割見込書を添付する必要があります。
申告期限後3年以内に分割がされない場合に、小規模宅地の特例の適用を受けるためには、申告期限後3年を経過する日の翌日から2か月を経過する日までに、遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書を提出し、所轄税務署長の承認を得る必要があります。
このような書類を提出していることを要件の一つとして、分割が行われた日の翌日から4か月以内に、小規模宅地の特例の適用をして、更正の請求を行うことができます。
3 相続財産に含まれる特例対象地が一つである場合
小規模宅地等の特例を適用するためには、上記の様に、申告期限までに分割されているだけではなく、特例対象地を取得する相続人全員の同意があることも要件となっています。
そのため、特例対象地を取得する相続人が決まっている場合には、その相続人の同意があれば、特例対象地を取得しない相続人の同意なしに、他の財産が未分割であったとしても、小規模宅地等の特例の適用ができます。
4 相続財産に含まれる特例対象地が複数ある場合
相続財産に含まれる特例対象地が複数あり、申告期限までに分割が終わっている特例対象地と分割が終わっていない特例対象地がある場合、分割が終わっている特例対象地について、小規模宅地等の特例の適用を受けるための要件が問題となってきます。
既に述べたとおり、小規模宅地等の特例の適用を受けるためには、特例対象地を取得する相続人全員の同意があることが要件の一つとなっています。
そして、相続財産のうち未分割の土地は、法定相続分による共有状態で各相続人が取得している状況になっていると解されています。
そのため、未分割の特例対象地がある場合には、相続人全員が特例対象地を取得していることになり、小規模宅地等の特例の適用のためには、相続人全員の同意が必要となります。
相続人全員の同意がない場合、分割が終わっている土地について、小規模宅地の特例の適用はできないことになります。
よくある間違いとして、当初申告において、申告期限後3年以内の分割見込書を提出して、全ての財産が分割された後に、特例対象地に小規模宅地等の特例を適用して、更正の請求を行おうと考えている場合です。
残念ながら、そのような場合、相続人全員の同意があったとしても、当初申告で分割済みの特例対象地について、小規模宅地等の特例の適用を受けることはできません。
これは、当初申告で、分割済みの土地について、小規模宅地等の特例の適用の可能性があったにもかかわらず、小規模宅地等の特例の適用を適用しないという選択をしたとみなされるためです。
他方、申告期限時点で未分割の特例対象地については、当初申告において、申告期限後3年以内の分割見込書を提出してあれば、分割後に相続人全員の同意があれば、小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。
ただし、申告期限時点で未分割の特例対象地があるようなケースでは、相続人間の紛争が顕在化している場合が多いので、事実上、相続人全員の同意を得ることは難しいでしょう。
5 生前対策の重要性
確実に小規模宅地等の特例の適用を受けるために、相続が発生する前に、小規模宅地等の特例の適用が受けられる可能性のある土地かどうかを確認し、遺言で土地を取得する相続人を決めておく必要があります。
生前に相続税のシミュレーションとどのような場合に小規模宅地の特例の適用を受けることができるのかについて確認をすることで、相続人が納税する相続税額は大きく異なってきます。
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