タンス預金は相続税対策になるのですか?
1 タンス預金は相続税対策にならない
結論から申し上げますと、タンス預金は相続税対策にはなりません。
むしろ、相続税対策と思って意図的に多額のタンス預金を作っていた場合、税務調査の対象となり、多額の追徴課税を納めなければならなくなる可能性があります。
そもそも、タンス預金を相続税対策として利用するということは、当該タンス預金を被相続人の相続税申告について、遺産に含めずに申告を行うということかと思いますが、以下の理由のとおり、タンス預金は相続税対策にもならず、基本的にリスクにしかならないため、相続税対策のためにタンス預金を作るということはおすすめしません。
2 タンス預金が相続税対策にならない理由
よくある誤解として、「税務署がタンス預金を把握できるはずがない」というものがあります。
もっとも、この発想はかなり危険であり、税務署としては、亡くなった方(被相続人)の預貯金口座の動きや相続人等の預貯金口座の動きなどから、ある程度のタンス預金の情報を把握することが可能であり、「タンス預金だから税務署にばれない」ということは基本的にありません。
また、預貯金口座の履歴を調べられるのが原則10年であるため、「タンス預金について、10年前に作ったものであれば安全」と誤解されている方もいます。
しかし、たとえ10年前に作ったタンス預金であっても、被相続人の収入の状況からして被相続人の遺産が少ないという場合は、そこから税務署が調査し、タンス預金が発覚してしまう事例も多々あります。
このように、タンス預金は、たとえ10年以上前に作られた物であっても、基本的に相続税対策にはなりませんので、注意が必要です。
3 タンス預金のデメリット
タンス預金について、遺産に含めて相続税の申告をしなかった場合、税務調査に入られ、タンス預金の存在が発覚する可能性があります。
そうなった場合、相続人もタンス預金の存在を知っていて意図的に相続税の申告を行った場合や、そもそも相続税の申告すら行っていない場合は、多額の追徴課税(重加算税)が課せられる可能性があります。
具体的には、タンス預金を除いて相続税の申告を行った場合(過少申告の場合)は、原則、本来納める税額から申告した税額を控除した差額の35%となります。
また、そもそも相続税の申告を行っていない場合(無申告の場合)は、原則、本来納める税額の40%となります。
重加算税の詳細については、以下の国税庁のホームページもご参照ください。
参考リンク:国税庁・相続税及び贈与税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)
たとえば、相続税が1000万円の方の場合、無申告だと400万円の重加算税を課せられる可能性があり、さらに延滞税という利子税も支払う必要があります。
なお、延滞税については、原則として、年7.3%から14.6%と定められています
詳細については、以下の国税庁のホームページもご参照ください。
参考リンク:国税庁・延滞税について
このように、タンス預金については、相続税対策にならないだけでなく、税務調査に入られたり、多額の追徴課税を課せられたりするリスクがありますので、やはりおすすめはできません。
4 相続税対策は相続税に詳しい税理士にご相談を
巷に流れている相続税対策といわれるもののなかには、名義預金と同じように、相続税対策にはならず、むしろ税務調査や追徴課税の危険性を高めてしまうものもあります。
また、ネットの情報や税理士以外の専門家のアドバイスの中には間違っているものもあり、実際、税理士以外の専門家のアドバイスに従って相続税対策を行ったところ、後日、税務調査に入られ、多額の追徴課税を支払わなければならなくなった事例もあります。
そのため、ネットや税理士以外の専門家のアドバイスを鵜呑みにしてしまうのは危険ですので、相続税対策を行う場合は、相続税に強い税理士にご相談されることをおすすめします。
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