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「相続税対策」に関するお役立ち情報

養子縁組による相続税対策

  • 文責:税理士 内堀昌樹
  • 最終更新日:2024年7月4日

1 養子縁組による基礎控除額の増加

養子縁組をすることによって、納める相続税の負担を大きく減らすことが可能になる場合があります。

平成27年1月1日以降の相続税の基礎控除額は、「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」となっています。

相続財産の額がこの基礎控除額を超える場合にのみ、相続税の申告が必要です。

被相続人が養子縁組をしていた場合には、養子についても法定相続人の数に算入することができます。

参考リンク:国税庁・相続人の中に養子がいるとき

ただし、算入できる数には限度があり、被相続人に実子がいなかった場合には、2人まで法定相続人の数に加えることができますが、実子がいる場合には、1人までしか法定相続人の数に加えられません。

たとえば、実子が2人、養子が2人いる場合の基礎控除額は、3000万円+(600万円×3人)の4800万円となり、相続財産の額が4800万円以下であれば、そもそも相続税の申告は不要となります。

2 死亡保険金や死亡退職金の非課税枠の増加

死亡保険金や死亡退職金については、「500万円×法定相続人の数の金額」までは、非課税となります。

たとえば、相続人が3人の場合、相続人が受け取る死亡保険金や死亡退職金の金額のうち、1500万円までは相続税がかかりません。

養子縁組を利用した場合、基礎控除額と同様、この非課税枠が増加します。

そのため、先ほどの例(実子が2人、養子が2人)の場合、1500万円までは、死亡保険金や死亡退職金について、相続税がかかりません。

3 相続税対策の養子縁組の有効性

相続税対策として養子縁組をする場合、養子縁組が無効にならないか、注意する必要があります。

⑴ 相続税対策目的の養子縁組

そもそも、養子縁組においては、当事者間で真に親子関係の設置を欲する意思(「縁組意思」といいます)があることが必要とされています。

それでは、相続税対策のために養子縁組をした場合に、この縁組意思が認められるのでしょうか。

この点を判断した最高裁判所の判決として、最高裁判所平成29年1月31日判決(民集71巻1号48頁)があります。

そこでは、「専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても、直ちに当該養子縁組について民法802条1号にいう『当事者間に縁組をする意思がないとき』に当たるとすることはできない」と判示されており、相続税対策で行った養子縁組であっても有効となるとされました。

参考リンク:最高裁判所判例集

⑵ 無効になる可能性のある養子縁組

他方で、判例では、「相続税の節税のために養子縁組をすることは、このような節税効果を発生させることを動機として養子縁組をするものにほかならず、相続税の節税の動機と縁組をする意思とは、併存し得るものである」と述べられています。

ここからすると、判例は、相続税の節税目的であることが縁組意思を否定することにならないと考えていることは明らかですが、相続税の節税の目的しかなく、当事者間に親子関係を設置しようと欲する意思があったとは評価できないような場合、つまり、当事者間にまったく交流がなく、制度の悪用としか評価できないような養子縁組についてまで有効とまでは判断していないとも考えられます。

たとえば、亡くなった方が名古屋に住まわれており、養子は名古屋から離れた地域に住み、名古屋を訪れたこともないという場合には、そのような養子縁組にも法的効果が確実に認められるということはできません。

4 養子縁組で相続税対策を行う際の注意点

養子縁組を行う場合、養子縁組をすることで、改姓をする必要があったり、それぞれ扶養義務を負うことになったりしますので、注意が必要です。

また、他の相続人が、被相続人と養子が養子縁組をした事実を知らなかった場合、その後の相続で感情的な対立により、揉める場合があります。

そのため、養子縁組を行う場合は、他の親族にも伝えた上で、行った方が良いこともあります。

このように、養子縁組を活用した場合、相続税の負担を大きく減らすことが可能になりますが、活用方法を間違えると、養子縁組が無効になったり、相続人間で紛争になったりすることがあるため、注意が必要です。

養子縁組による相続税対策をお考えの場合は、相続に詳しい専門家にご相談いただきながら対策を進めることをおすすめします。

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