「相続税申告」に関するお役立ち情報
税務調査に入られやすい相続税申告とその対策
1 税務調査とは
相続税申告は、申告期限までに申告書を提出することにより、すべての手続が完了するとは限りません。
相続税申告書に記載した財産以外に、遺産として挙げるべき財産があると想定される場合には、税務調査がなされる可能性があります。
税務調査の対象になると、税務署の職員が自宅等を訪れ、短くても丸1日、時には何日もかけて、関係人に聴き取りを行ったり、現地に存在する資料を確認したりします。
そして、新たに遺産として挙げるべき財産が見つかった場合には、修正申告を促されます。
多くの場合、修正申告により、追加で相続税の本税を納付しなければならなくなり、合わせて加算税・延滞税を納付する必要も生じます。
相続税については、税務調査がなされる割合が3割と比較的多く、申告の時点で、税務調査をある程度想定した準備を行っておくことが求められます。
なお、令和3年における税務調査の状況等が、国税庁のホームページに記載されておりますので、あわせてご確認ください。
参考リンク:国税庁・令和3事務年度における相続税の調査等の状況
このホームページにも記載されているとおり、税務調査は、令和3年時点で6317件となっており、令和2年に比べると1000件以上増えています。
2 相続税の税務調査のポイント
税務調査と言うと、税務署の職員が自宅を調べ、金の延べ棒が隠されているのを発見するといったシーンを思い浮かべる方が多いかもしれません。
確かに、金の延べ棒を発見するのと似たような場面が生じることもなくはないですが、実際には、これとは違うポイントが着目されることが多いです。
以下では、税務署の職員が着目するポイントの例を紹介したいと思います。
⑴ 被相続人名義の口座から生前、多額の出金が行われている場合
生前に多額の出金が行われている場合には、税務署の職員は、被相続人名義の口座から親族名義の口座へ預貯金が移動しているのではないかといったことを疑います。
このような場合には、税務署の職員は、税務調査に先立ち、金融機関に照会を行い、親族名義の口座への多額の入金の有無をチェックしていることがほとんどです。
そして、税務調査では、親族に聴き取り調査を行い、親族が意図的に財産隠しを行っているのではないかということを確認します。
意図的に財産隠しがなされたとの認定が行われた場合は、最大40%の重加算税が課税される可能性がありますので、対応には注意が必要です。
⑵ 被相続人が親族名義で預金口座を開設していた場合
被相続人が自分の名義ではなく、親族名義で口座を開設し、多額の貯蓄を行っていることがあります。
このような預貯金は、親族名義であっても、実体としては被相続人の遺産であると認定されます。
この場合にも、税務署の職員は、事前に金融機関への照会を行い、親族名義の預貯金の有無を調査しています。
そして、税務調査では、やはり、親族に聴き取り調査を行い、財産隠しの意図の有無を確認します。
この場合にも、意図的な財産隠しとの認定がなされた場合は、最大40%の重加算税が課税される可能性があります。
なお、令和3年では、税務調査対象のうち15.5%が、重加算税を課税されています。
3 税務調査の対策
それでは、税務調査が想定される場合には、どのような対策を立てておくべきなのでしょうか。
上記の例に即して、対策の具体例を紹介します。
⑴ 被相続人名義の口座から生前、多額の出金が行われている場合
この場合には、申告書において、被相続人名義の口座から親族名義の口座へ移動した財産について、何らかの説明を行っておく必要があります。
たとえば、移転した財産について、実体としては被相続人の遺産であると説明したり、被相続人から親族への貸金であると説明したりすることが考えられます。
ここで重要なのは、移動した財産を隠そうとはせず、納付すべき税額が増えたとしても、申告書で数字を挙げて、何らかの説明を行うべきであるということです。
後日、財産隠しの存在が明らかになり、最大40%の加算税が課税されることは、避けるべきだからです。
⑵ 被相続人が親族名義で預金口座を開設していた場合
この場合も、申告書において、親族名義の預金を遺産(いわゆる名義預金)として挙げるべきです。
4 相続税申告についてのご相談
被相続人名義の口座から多額の出金がある場合等、どのような申告書を作成すれば良いのか悩ましい事案についても、打合せを行い、適切な申告書を作成できるよう、サポートをさせていただいています。
相続税申告についてお困りのことがありましたら、名古屋駅すぐの税理士法人心にご相談ください。
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